社史入門

社史編集の取材や写真撮影も専門的な知識と経験が必要なので、実際の取材と写真撮影においては、社史編集実務を委託している編集・制作会社に依頼するのが通常です。

編集・制作会社への取材依頼の仕方

編集・制作会社はさまざまなジャンルが得意な社外ライターを擁しています。しかし、社史はビジネス系書籍なので、経営戦略、マーケティング、人材育成、経済・金融などの分野に明るいビジネス系ライター選任を依頼すべきでしょう。さらに、上場会社なら主要財務指標の推移から、非上場会社の場合は公開決算書から、その企業の特徴や業界内のポジションをある程度把握できる知識と経験を持ったライター選任をリクエストするのも忘れてはならないでしょう。
ビジネス系書籍の文章は、小説や時流を追う雑誌類の文章とは全く異なります。巧みなストーリー展開で読者を引き込む流麗な文章、あるいは読者の意表を突く切れ味鋭い文章ではなく、数字と事実関係を客観的に分析し、関連付け、それを社史発行目的や本文構成に基づき検証した文章が必要だからです。

編集・制作会社がライターを選任したら

編集・制作会社がライターを選任したら、そのライターとの打ち合わせを行います。
社史発行目的、編集方針、本文構成などの認識共有が目的です。打ち合わせの場ではこれらのレクチャーの他、自社の価値観、社員の教育方針など社史発行に関して公開できる社内情報は可能な範囲で伝えることが大切です。これにより、ライターは編集事務局と社史発行意識の共有ができ、本文構成の勘所を自分なりに理解し、大まかな取材ストーリーを立てられるからです。

ライターに取材依頼をしたら

ライターへの取材依頼には、取材と原稿執筆をセットで依頼するケースと、取材は編集事務局員が行い、原稿執筆だけを依頼するケースの2通りがあります。
通常は前者で、後者はまれです。前者の場合は、取材先が決まる都度、次のような事前と事後の打ち合わせをします。

事前打ち合わせ

取材趣旨、取材対象者、取材事項、取材場所、集合時間と場所など。
これは編集事務局が取材先に送付した取材依頼書コピーと、取材準備で集めた取材対象者の資料コピーを渡し、補足説明をすればよいでしょう。

事後打ち合わせ

取材終了後の原稿に盛り込むべき内容の擦り合わせ。
これは「ライターのピント外れ原稿」防止が目的です。取材帰りに駅周辺の喫茶店などで行うとよいでしょう。後者の場合は、取材後に次のような打合せを行います。

  • 取材趣旨、取材対象者のプロフィール、自社との関係、取材内容(ICレコーダとメモ書きのコピー)の説明
  • 原稿執筆のポイント
  • 原稿に盛り込むべき必須事項の説明

原稿が送られてきたら

原稿分量、誤字・脱字、固有名詞、数字、表記の統一性、コンプライアンスの適否(差別的、中傷的、誇大的な表現がないか)、著作権抵触の恐れがないか、読者が理解しやすいかなどをチェックします。これらのチェックは、もちろん編集・制作会社のデスク(その企業担当の編集・制作責任者)が済ませています。しかし、最終チェックを行う編集委員会の役員などから疑義が提起された場合、迅速回答するためにも編集事務局での中間チェックが重要といえます。

撮影依頼をするには

編集・制作会社へ撮影を依頼する場合も、カメラマンに社史発行目的、編集方針、本文構成などが的確に伝わるようにしましょう。撮影場所や必要ショットを伝えるだけでは、カメラマンは全体像が分からないため編集方針や本文構成と撮影した写真との間にブレが生じ、それが原因で社史全体の品質が低下してしまう可能性があるからです。
また、個々の撮影に関しては、その都度次のような情報通知が必要です。

  • 撮影日時・場所、撮影当日の集合時刻と場所
  • 撮影対象

肖像写真、インタビュー・座談会風景、集合写真、各種イベント・業務風景などの別

  • 撮影人数
  • 撮影イメージ
  • 必要カット数
  • スタジオ利用の有無
  • 画像加工の必要性の有無

撮影対象や場所によってはライト、反射板、蛍光灯反射傘、三脚など重装備の撮影機材が必要な場合があります。撮影場所が屋外の場合、最適な撮影箇所を見つけるためロケハン(撮影日前の現場チェック)が必要なケースもあります。撮影場所に行ってから「予想と違っていた、撮影機材が足りない」などの事態を防ぐためにも、可能な限り撮影に関する詳しい情報通知は欠かせません。

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