社史入門
基本ステップ 編集・制作会社への取材・写真撮影依頼のポイント
周年事業の社史編集においては、取材や写真撮影は専門的な知識と経験が必要です。そのため、実際の取材や撮影は、社史編集の実務を委託する編集・制作会社に依頼するのが一般的です。ここでは、編集・制作会社への依頼の流れとポイントをご紹介します。
1. 編集・制作会社への取材依頼の仕方
編集・制作会社には、多様な分野に強い社外ライターが在籍しています。しかし、社史はビジネス書籍の一種ですので、以下の条件を満たすビジネス系ライターの選任を依頼しましょう。
- 経営戦略、マーケティング、人材育成、経済・金融などの専門知識があること
- 上場企業の場合は主要財務指標の推移、非上場企業の場合は公開決算書などを理解し、企業の特徴や業界内ポジションを把握できること
ビジネス系書籍の文章は、小説や雑誌記事のようなストーリー性や鮮やかな表現を求めるものではありません。数字や事実を客観的に分析し、社史の発行目的や本文構成に沿った検証的な文章が必要です。
2. 編集・制作会社がライターを選任したら
編集・制作会社がライターを決定した後は、ライターとの打ち合わせを行います。この打ち合わせの目的は以下の通りです。
- 社史発行の目的、編集方針、本文構成の共有
- 自社の価値観や社員教育方針など、社史制作に関連する社内情報の伝達
これによりライターは、編集事務局と意識を合わせて取材・執筆の方向性を理解し、取材ストーリーの大まかな構成を立てられるようになります。
3. ライターに取材依頼をしたら
取材依頼には、主に以下の2つの方法があります。
- 取材と原稿執筆をセットで依頼する方法(一般的)
- 取材は編集事務局が行い、原稿執筆のみを依頼する方法(まれ)
3-1. 取材と原稿執筆をセットで依頼する場合
取材先が決まるたびに、以下の打ち合わせを行います。
- 事前打ち合わせ
- 取材趣旨、対象者、取材内容、場所、集合時間・場所などの確認
- 編集事務局が取材依頼書と取材対象者の資料をライターに提供し、補足説明を行う
- 事後打ち合わせ
- 取材後、原稿に盛り込むべき内容の確認と調整
- ライターが方向性を間違えないよう、取材終了後に喫茶店などで行うことが多い
3-2. 取材は編集事務局が行い、原稿執筆だけ依頼する場合
- 取材趣旨や対象者プロフィール、自社との関係、取材内容のメモや録音データの説明
- 原稿執筆のポイントや必須事項の伝達
4. 原稿が送られてきたら
原稿チェックのポイントは以下です。
- 原稿の分量が適切か
- 誤字・脱字の有無
- 固有名詞、数字、表記の統一性
- 差別的、中傷的、誇大表現がないかなどコンプライアンス面
- 著作権侵害の可能性
- 読者にとって理解しやすい内容か
これらは編集・制作会社のデスク(編集責任者)が事前にチェックしますが、編集委員会の役員などから疑義が出た場合に迅速に対応できるよう、中間チェックを編集事務局でも行うことが重要です。
5. 撮影依頼をするには
編集・制作会社へ撮影を依頼する際は、カメラマンに以下の情報を的確に伝えることが大切です。
- 社史発行の目的、編集方針、本文構成
- 撮影日時・場所、集合時間・場所
- 撮影対象(肖像写真、インタビュー、集合写真、イベントや業務風景など)
- 撮影人数、撮影イメージ、必要カット数
- スタジオ利用の有無、画像加工の必要性
撮影場所によっては、ライトや反射板、三脚などの重装備が必要になることもあります。屋外撮影の場合は、事前に現場を確認(ロケハン)し、撮影機材や環境を把握しておくと当日のトラブルを防げます。