社史・周年知恵袋

近年では、漫画型の社史の制作を検討される企業も増えてきました。
歴史を忠実に残す社史ももちろん重要ですが、それ以上に「読まれる」「活用できる」社史の制作を望む企業が増えてきたことが影響しているのでしょう。
「読まれる」「活用できる」社史の中でも、人気の漫画型社史。
今回は、漫画型社史のメリット、構成、制作上の注意点、具体的な事例をご紹介します。

1、漫画社史の4つのメリット

1−1 何と言ってもわかりやすい

画像は文字に比べ、瞬時に理解しやすい傾向があるため、文字とイラストを組み合わせた漫画では文章のみの場合と比べて一目で情報を伝え安くなります。
人間の脳はもともと視覚処理に優れており、イラストや画像などのビジュアルから瞬時に情報を読み取る能力を持っています。しかし、文字は瞬時に情報を処理することが難しいため、脳が疲れてしまうことも。
イラストや画像表現は文字よりも脳にとって情報処理が楽なため、理解しやすい傾向があります。

1−2 関心を持ってもらいやすい

文章のみを用いた社史と比べ、関心を持ってもらいやすくなります。全年齢を対象にすることができますが、中でも若い世代を対象とする場合に効果的です。インナーブランディングを目的とした社史制作であれば、新入社員研修のテキストとして用いたり、採用活動では学生向けに自社のことをより深く知ってもらうツールとして活用できます。

1−3 歴史的出来事を「臨場感」を持って伝えることができる

漫画は静止画的表現でありながらマルチメディア的な側面ももつため、表現される情報量は思いのほか多いものです。イラストを用いた「状況描写」、擬音語を用いた「音声表現」、キャラクターのセリフや心の中のつぶやきを用いた「心理描写」などをストーリーに沿って紹介していくことで「臨場感を伴った表現」が可能になります。

1−4 文字情報のみに比べて情報伝達速度が速い

文章を読み進めるのに比べ、絵を見ながら感覚的に読み進められる漫画は読むスピードも速くなります。読者が情報を読み取る速度が速いのも漫画表現の情報伝達特性です。その上、複雑な内容・文章も登場人物のセリフとして紹介することで、比較的わかりやすく紹介でき、コマ割りを工夫すればテンポよく読み進められる読み物にもなります。

2、漫画社史はどのような構成になるのか?

「漫画社史というと全ページ漫画なの?」「どんな構成になるのものなのか」など疑問をお持ちの方も多いと思いますので、漫画社史の台割(だいわり)をご紹介します。台割とはページ数毎の内容を表にまとめたもののことで、目次の原型とでもいえるもののことです。漫画社史の台割といっても多種多様ですがここでは代表例を紹介します。

2−1 漫画社史の台割(100ページの場合)

  • 表紙

    漫画は、読者がページを開かないと始まらない 。開きたくなる表紙や形になるよう工夫しましょう。

  • 1~4P:プロローグ

    目次や社史のコンセプト、創業者の言葉などを綴る。

  • 5~6P:社長メッセージ

    社長から周年にかけた想いや社史の編纂方針などを語っていただく。

  • 7~8P:年表

    細かく長大なものでなく、全体を一見開きでまとめた歴史年表を掲載。

  • 9~90P:歴史漫画
    (20P×4話)

    • 自社にとってまさにこの時期にこそ伝えるべきことを整理してそれが伝わるエピソードを描く。
    • 周年のコンセプトに沿った内容であることが重要。
    • 事業部やグループ会社、歴史の年代設定などバランスを考えることも重要。
  • 91~100P:まとめ
    (全社データ・編集後記など)

    事業部や読者が納得できるよう歴史を補完するデータ。 これを知っておくと漫画がより深く理解できるようなデータを紹介する。

2−2 多くのエピソードを紹介したい場合

もしも、さらに多くのエピソードを紹介したい場合は、歴史漫画を20P×4話から8話に増やして全180ページすることもできます。

事業部が多い場合は、その方が全事業部のエピソードを紹介するなどバランスが取りやすい傾向があります。ただし、掲載する漫画が増える分コンセプトや構成などより深く吟味する必要があります。

さて、漫画社史の構成はなんとなくイメージできたでしょうか。次に漫画社史を制作する際の注意点を具体的に見ていきましょう。

3、漫画社史を作る際の注意点

3−1 伝える情報を絞ろう

文章ベースの分厚い百科事典型社史に比べ、網羅的に歴史を紹介することはできないため、自社の歴史のどの時点を紹介すべきかや伝えたい内容を制作当初にピックアップしておきましょう。

3−2 工程ごとに決裁を明確にしよう

漫画制作の流れを簡単に説明すると、シナリオ制作⇒下書き制作⇒本書きの3ステップとなります。
本書きに進んだ後で内容に変更が生じた場合、漫画の作り直しが必要となり膨大なタイムロスとなってしまいます。予定が遅延するリスクを下げ、効率的な進行を行うためには、3ステップごとに最終責任者の決裁を明確にとり工程の逆戻りが起きないようにする必要があります。

3−3 事実資料と当事者の証言を集めよう

漫画特有の豊かな表現で歴史を正しく描写するためには、当時のことがわかる充実した事実資料と当時を知る関係者の心理や感情がわかる証言が必要となります。 社内に残っている資料が不足している場合や、当時の関係者がすでに退職している場合は取材で補いましょう。

3−4 修正費用の発生に注意しよう

漫画家は基本的に外部スタッフを用いるケースがほとんどです。 3−2でも述べましたが、本書きに進んだ後で内容に変更が生じた場合、漫画の作り直しが必要となります。その場合、修正が規定以上になると、 別途費用が発生するため注意が必要です。

3−5 なぜ漫画社史であるべきかをよく検討しよう

制作だけでなく社内稟議をスムーズに通すためにも、なぜ今自社の歴史を漫画で紹介すべきなのか制作前によく検討しておきましょう。その上で、編集方針を書面化し関係者にその判断基準を周知しておくと効果的です。

まとめ

漫画は社史においても効果的な表現であり、今後も社史に漫画表現を採用する企業は増加していく傾向にあるでしょう。 しかし、他の書籍に比べれば読みやすいものの、漫画はあくまで受動的なメディアです。読者が手に取り、読んでくれなければ伝えたいことを伝えることはできません。そうした対象者への「見せる強制力」という意味では動画の方が優れていますし、広く世間に公開したい場合は、Webの方が優れています。 漫画社史も万能ではなく、得意なことと不得意なことがありますので、それらを踏まえた上で、御社の社史の発行目的やコンセプトに合致するようであれば、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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