社史入門
基本ステップ 社史の体裁をどう決めるか
~伝わる一冊にするための基本構成と考え方~
周年事業において、社史の発行を検討する企業は少なくありません。
しかし、「どんな体裁にすればよいのか」「何から決めればよいのか」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。
社史はその企業の歴史や想いをカタチにする、大切な記録物です。配布先にとっての印象を大きく左右するのが、その“体裁”です。いくら内容が充実していても、見た目が貧弱であれば、読む側の関心を引くのは難しくなります。
本記事では、紙媒体で社史を発行する場合に押さえておくべき体裁の基本要素と、選定時のポイントを整理してご紹介します。
1. 社史の体裁を構成する4つの基本要素
社史の体裁は、以下の4つの要素で構成されます。
- 判型(サイズ)
- ページ数
- 用紙
- 製本仕様
紙媒体が主流である現在、これらを適切に選ぶことが、社史の完成度や印象に直結します。
※最近ではDVDやCD-ROMといった電子媒体の活用も見られますが、全体の1割程度に留まり、紙の書籍形式が中心となっています。
2. 判型(サイズ)は用途と読みやすさで選ぶ
判型は「A判」「B判」「AB判」の3系統が一般的で、それぞれのサイズによって用途も異なります。社史ではA4サイズが主流です。
主な判型の特徴と用途
判型 | 主な用途 |
---|---|
A4判 | 社史、記念誌、製品カタログなどに多く使用。見やすく情報量が多い |
A5判 | ビジネス書、専門書など。手に取りやすくコンパクト |
B5判 | 辞書や週刊誌などでも使用。A4より一回り小さく扱いやすい |
AB判 | 写真集、総合雑誌など、ビジュアル重視に適している |
社史の内容やデザイン方針に応じて、見やすさと保管しやすさのバランスを考えましょう。
3. ページ数は「8の倍数」で計画的に
社史の印刷は、8ページ単位で製本されます。これは印刷機の仕様によるもので、8ページごとに刷版を作成・綴じていくためです。
ページ数設計時の注意点
- 基本的には 80ページ、160ページなど8の倍数で構成
- カラーとモノクロの切り替えも8ページ単位
- 例:1ページだけカラーにすると、残り7ページもカラー扱いになり、コストが無駄にかかる
このように、構成や掲載内容を決める際は、印刷仕様とコスト効率を意識する必要があります。
4. 用紙は「書籍紙系」か「コート紙系」が基本
社史に使われる本文用紙は、大きく以下の2種類に分類されます。
主な用紙の種類と特徴
用紙の種類 | 特徴 |
---|---|
書籍紙系(クリーム系) | 目に優しく、文字が読みやすい。落ち着いた雰囲気を演出できる |
コート紙系(白系) | 発色が良く、写真やカラー印刷に適している。ビジュアル重視向け |
昔の書籍紙は経年劣化が早いという難点がありましたが、現在では中性紙(酸化しにくい紙)が主流で、耐久性も安心です。
5. 製本仕様は「上製本」か「並製本」か
製本仕様によって、社史の“格”やコスト感が変わってきます。
それぞれの製本方式
- 上製本(ハードカバー)
-
- 厚紙を使った高級仕様
- 糸かがりや接着で綴じ、耐久性が高い
- フォーマルな印象で、化粧箱入りにすることも可能
- 並製本(ソフトカバー)
-
- 表紙と本文が同サイズの軽装仕様
- 雑誌や文庫、新書などで一般的
- コストを抑えつつカジュアルな印象
以前は「社史は上製本が常識」と言われていましたが、現在では予算や発行目的に応じて柔軟に選ぶ企業も増えています。
6. 体裁の組み合わせで“伝わる社史”に
社史の完成形は、判型・ページ数・用紙・製本の組み合わせによって大きく変わります。
その選定は決して簡単ではありませんが、「誰に何をどう届けたいのか」という発行目的を明確にすることが、最適な体裁を導く鍵となります。
まとめ:体裁も、社史の大切な“中身”の一部
「人は見た目で判断する」と言われるように、社史においてもその体裁は読む人の第一印象を左右します。
本文がどれほど素晴らしくても、体裁に工夫がなければ、十分に伝わらない可能性もあります。
だからこそ、社史の“見た目”は内容と同じくらい重要なのです。