社史入門

周年事業の一環として社史を編纂する際、欠かせないステップのひとつが「文書などの資料収集」です。本文構成や誌面の体裁が決まった後は、必要な資料を整理し、計画的に収集していくことが成功への鍵となります。
とはいえ、収集すべき資料は社内外に多岐にわたるうえ、量も膨大です。どこから手をつけるべきか戸惑う担当者の方も少なくありません。この記事では、資料の種類と効率的な収集方法について、基本的な流れを解説します。

1. どんな資料を集めるのか?

社史編集において必要となる資料は、大きく以下の2種類に分けられます:

  • 文書(今回の主な対象)
  • 写真(紙焼き写真、ネガ・ポジフィルム、8mm/16mmフィルムなど)

また、資料は、さらに社内資料社外資料に大別されます。それぞれに含まれる主な資料は以下の通りです。

▼ 社内資料の例

  • 決算短信、決算報告書、有価証券報告書
  • 経営計画書、取締役会議事録、稟議書
  • 株主総会資料、社内報、広報誌、ニュースリリース
  • 社内通達文書、重要契約書(事業提携など)
  • 製品マニュアル、開発資料、技術・サービス関連資料
  • 売上・生産・在庫などの事業統計
  • 自社調査資料、社員研修資料、表彰関連文書
  • 創業者や叙勲受章者の功績調書
  • 会社案内、製品カタログ・パンフレット など

▼ 社外資料の例

  • 自社に関連する白書・公的統計・市場調査レポート
  • 官公庁・自治体の発行資料
  • 業界紙誌や新聞、一般雑誌の掲載記事
  • 業界団体の統計資料、業界史、記念誌
  • 同業他社の社史 など

2. 文書はどうやって集めるのか?

資料収集の基本方針は、以下の2軸を段階的に進めていくことです:

  • 基礎資料 → 専門資料 へと深める「縦の流れ」
  • 社内 → 社外 へと広げていく「横の広がり」

この両面から収集範囲を拡大していくことが、効率的かつ網羅的な情報収集に繋がります。

▼ 社内の基礎資料:まずは編集事務局で収集可能な範囲から

たとえば、決算資料や経営資料などの「基礎的社内資料」は、編集事務局のみで集められる場合が多く、収集の出発点として適しています。

▼ 各部門に眠る専門資料:情報の“所在”を把握する調査から

一方で、製品開発資料や研修記録など、より専門性の高い資料は、社内各部門が独自に保管していることが一般的です。この場合、まずは「どの部署に、どのような資料が存在しているのか」を把握する調査から始める必要があります。

▼ OBからの収集:個人保管の“私的資料”が貴重な一次情報に

退職者(OB)の中には、現役時代に使用していたメモ、ラフスケッチ、下書き資料などを自宅で保管しているケースがあります。これらは公的には残されにくい資料ながら、社史に深みを与える貴重な一次資料となることも多く、丁寧なヒアリングと資料提供依頼が欠かせません。

3. 資料を効率よく管理するための「資料台帳」

収集した資料は、A4サイズの「資料台帳」で一元管理するのが効果的です。台帳は以下のように設計すると、資料の可視化・進捗管理が容易になります。

▼ 資料台帳の構成

縦軸:分類(部署別・ジャンル別) 例:技術開発資料、研修資料など
横軸:時系列(資料作成年月日など) 年月順に記載

この形式により、

  • 「どの資料が、どの部署に存在し」
  • 「いつ作成されたのか」

を一目で把握できます。また、未収集資料の“抜け”にも気づきやすくなります。
なお、社外資料についても、同様に台帳で管理することを推奨します。

まとめ:準備こそが社史編纂の第一歩

文書系資料の収集は、社史制作の土台となる重要なプロセスです。情報が整っていれば、本文構成や編集作業が格段にスムーズになります。
膨大な資料の中から必要な情報を見つけ出し、体系的に管理するには、計画的な手順と社内外の協力が不可欠です。周年事業を機に社史を制作される場合は、運営会社や専門の編集会社のサポートも視野に入れると、資料収集の精度と効率が高まるでしょう。

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