社史入門
基本ステップ 社史の本文構成の決め方
~用途に応じた構成で伝わる社史を~
企業の節目に制作される「社史」は、単なる記録ではなく、企業の理念や価値を社内外に伝える重要なツールです。
その中でも、社史の印象を大きく左右するのが「本文構成」です。
ここでは、社史の本文構成をどのように決めるべきか、用途や目的別にわかりやすく整理してご紹介します。
1. 本文構成の決め手は「社史の用途」
社史の構成を考えるうえで、最初に明確にすべきなのは「何のために社史を作るのか」という発行目的と、その用途です。
社史の主な発行目的
社史の発行目的は企業によって様々ですが、以下のようなケースが一般的です。
- ① 事実の記録:創業からの歩みや出来事を正確に記録し、将来の資料とする
- ② ブランディング:企業の信頼性や存在意義を社外にアピール
- ③ 経営判断の根拠:過去の経緯を明文化することで、今後の判断材料とする
- ④ 企業DNAの継承:創業理念や精神を次世代に伝える
- ⑤ 従業員の一体感醸成:社史を通じて自社理解を深め、組織の結束を強める
- ⑥ 従業員のモチベーション向上:自社の歴史や成果を知ることで、働く誇りを育む
このように、社史は複数の目的を兼ねることも多く、目的に優先順位をつけて構成を考えることが成功のポイントです。
社史の主な用途と構成の基準
社史は目的に応じて、次のような用途で活用されます。用途ごとに、本文構成で重視すべき要素が異なります。
- 資料保存用途
自社の軌跡を記録として残すことが主な目的。
価値のある資料をいかにコンパクトかつ網羅的に収録するかが構成の鍵。 - 社員教育用途
社員の理解と共感を得るために、
創業理念/経営思想/社会的役割/事業拡大のプロセス/将来ビジョン などを体系的に整理して収録する構成が望ましい。 - 営業・対外配布用途
社史を営業ツールや贈呈品として活用する場合、
誰に配布するか(取引先・株主・メディア等)を踏まえた構成に。
視認性・読みやすさ・デザイン性が重要になることも多い。
2. 本文構成の主なタイプと特徴
社史の本文構成には様々なスタイルがありますが、大きく分けると以下の5タイプに分類されます。自社の目的や読者層に合わせて、最適な型を選ぶことがポイントです。
① 正史型(クラシックタイプ)
- 記録性を重視した伝統的な社史。
- 起きた出来事を時系列で網羅的に記載。
- 企業アーカイブとしての価値が高い。
- 関係者への敬意や感謝も丁寧に記録される傾向。
② テーマ型(企画主導型)
- 自社の強み・魅力的なエピソードを企画的に特集。
- 歴史の詳細よりも、メッセージ性・見せ方を重視。
- 冒頭に目玉企画を配置し、歴史年表などは巻末に掲載するスタイルが多い。
③ 多角型(読者多様型)
- 複数のステークホルダーを意識し、ターゲット別に読みどころを用意。
- ひとつの企画にとどまらず、広範囲な内容を取り上げる。
- 社外向け・社内向けの両面に配慮した柔軟な構成。
④ 自由型(表現多様型)
- マンガ、語録、ムック本、映像、WEBなどメディア形式にとらわれない構成。
- 表現方法は自由だが、目的に対する一貫したメッセージ設計が重要。
⑤ 社内報型(簡易型)
- 社内報の特別号として発行されるケース。
- コンパクトかつスピーディに社内共有できる点が特長。
- 場合によっては印刷・製本せず、PDF配布やイントラ掲載も検討される。
まとめ:社史の本文構成は「目的×読者」で決める
社史の本文構成は、その社史を誰に・どんな場面で読ませたいかによって大きく変わります。
社史を「残す」だけでなく、「伝える」ものとして捉えるなら、構成こそが最も重要なポイントです。
編集方針を固めたうえで、社史制作のパートナーと共に、自社に合った本文構成を丁寧に設計することが成功への第一歩になります。