OUR WORKS

事例

アズビル株式会社
経営企画部 広報グループ
マネージャー
高橋 実加子様

理念制定、ブランディング、シンボルマーク、イベント、特設webサイト、ノベルティ、看板、ショールーム、マンガ、社史など

アズビル株式会社は、「人を中心としたオートメーション」を掲げ、ビルや工場などの市場で計測・制御関連事業を展開する企業です。創業100周年を記念し、新たなグループ理念の制定、グループシンボルマークやネーミングの導入などを実施。そこから段階的に社名変更などを行い、2016年には創業110周年を記念し全社や顧客を巻き込んだ大々的な周年事業に取り組まれました。大いなる経営変革と、それらを展開するうえでの広報戦略、周年事業展開の裏側に迫ります。

100周年の節目を迎え、新たなグループの姿を思い描く

アズビル株式会社の歴史は古く、1906年にドイツの工作機械メーカーの販売代理店・山武商会として創業しました。その後、法改正や業務提携などに伴う社名変更を実施しましたが、オートメーション事業の老舗企業としての実績に裏打ちされた“山武”の名が広く定着していました。「1998年に米国企業との資本提携関係を変更した際に、それまでの『山武ハネウエル株式会社』から『株式会社山武』へと変更しました。しかし、その後数年経っても外部からは“山武ハネウエル”と呼ばれることが多く、悩ましさを抱えていたのです。また、2005年頃には新たな事業分野や海外展開へ注力していく経営方針が打ち出されました。そこで『海外では“山武”の認知が低いし、Yamatakeと正しく発音できない』『先進性や事業内容を想起しづらい』といった課題を解消する手立てとして、創業100周年を機に新たな山武グループに生まれ変わろう、という機運が生まれたのです」と語るのは、同社の広報業務に携わられてきた高橋さん。こうして、グループとしてのビジョンや理念、シンボルマーク制定に向けた動きが本格化することとなりました。

想いをかたちに表すロゴ・ネーミング・理念

経営企画部が主導となって動き始めた大改革の取り組み。グループのブランドシンボルとなるという命題を背負い、ネーミングやロゴ策定などに取り掛かることとなります。「もともと、山武に代わるネーミングはコミュニケーション活動において使用する想定でしたが、新たにグループ会社に歴史のある老舗企業が加わることが決まり、急きょグループ全体の旗印という位置づけへ変更に。また、100周年の節目を機に、新たに世の中に提供していく価値を見つめ直すという動きに合わせ、これからの山武のあるべき姿と合わせてネーミングを検討していきました」と、高橋さん。検討過程で出てきた草案は、何と約1000個近くにも上ったそうです。「経営陣への提案から承認に至るまでの働きかけは、想像以上に大変でした。当初、10案程度に絞って経営会議でプレゼンテーションしたのですが、選定のプロセスや背景を十分に伝えられていなかったこともあり『よくわからない』『別に変えなくてもいいのでは』といった雰囲気になることもありました。
そこで、以後は検討プロセスを毎週経営陣にメールニュースとして配信することに。こまめに進捗を伝えることで、スムーズな経営判断ができるように進め、最終的には2006年3月に“AZBIL(※当時の案)”で経営陣の承認獲得に至りました」。

ネーミングやロゴの根底になるのが、グループ理念です。「従来はSavemation(Save+automation)という企業理念を掲げていました。この言葉には建物や工場の装置や設備を対象に計測・制御技術を活用し、省エネルギー、省資源、省力、省人に貢献する、という意味合いがありました。今回、100周年を機に改めて事業の在り方や提供価値を見直していくなかで見えてきたのが、“人”というキーワード。そこから生まれたのが「“人を中心としたオートメーション”で、人々の“安心・快適・達成感”を実現するとともに、地球環境に貢献します」というグループ理念です。アズビルは“automation・zone・builder”を組み合わせた造語として、新たなグループ理念とともに世に発信していくことになりました」。

そしてネーミングと同様にこだわったのが、ロゴデザインです。「デザインは記憶保持性(記憶に残りやすい)・想起イメージ(伝えたいイメージを想起させる)・再現性(さまざまな媒体や環境下でも容易に再現できる)・商標(図形商標権を確保できる)の4軸から検討を重ねました。ロゴでは理念に込めた想いを反映し、丸みを帯びた小文字を採用。多くの人の目に触れるロゴだからこそ、特に色にもこだわりました。もともと山武ハネウエル時代のロゴはHonewell社のロゴのカラーに合わせたオレンジ寄りの赤色、山武になってからは緑色に。会社を変えていくためのシンボルとするならば緑色から変更した方が良いと考えていたので、山武ハネウエルとは明度も濃度も異なる落ち着きのある赤色を推しました」と、高橋さん。検討の結果、2006年4月に現在のブランドロゴが決定しました。

2006年7月、新たなグループ理念・ロゴ・ネーミングが社内に発表されます。日本語・英語・中国語の3か国仕立てで理念ブックも作成し、まずは社内から浸透を図っていくこととなりました。その後、同年9月にはプレスリリースで社外発表。10月以降はウェブサイトの立ち上げ、事業所看板の掲出、製品・カタログでのロゴ変更を実施し、11月には藤沢にある事業所内にショールームも立ち上げました。「11月2日にはパシフィコ横浜を起点に全国各地の事業所をテレビでつなぎ、グループ従業員約8,000名が参加するイベントも開催。新たなユニフォームデザインをファッションショー形式で披露するなど趣向を凝らしました。また、同月には約1000名のお客様をお招きしたイベントを開催し、新しいシンボルの下での門出を大々的に発信しました」。その他、全社共通のスケジュール情報を共有するためのコラボレーションサイトを立ち上げた他、社員とその家族向けに事業をわかりやすく紹介したマンガ『azbil Stories』を発刊。グループ内の事業を知り、その社会的意義を理解するツールとして、現在は新たなストーリーを追加して増刷も行われています。

『azbil Stories』

http://www.azbil.com/jp/corporate/pr/library/stories/index.html

社名変更を踏まえ、次は創業110周年へ

アズビル制定から5年が経過したのを機に、2012年4月には社名も「株式会社山武」から「アズビル株式会社」へ変更しています。「海外グループ会社では先行して2009年に社名変更を実施しており、このタイミングで国内主要各社が同時に“アズビル”を冠する社名になりました。グループ理念、グループ名称、そしてグループ各社の社名を統合することで、改めてazbilをグローバルブランドとして強化していこうという意志表明の想いも込めています」。また同時に経営体制も刷新。年間を通してマスメディアや自社メディアなどを活用し、幅広く社名変更や経営体制の変更を発信し、認知度向上を図ったそうです。

そして、去る2016年は創業110周年の年。アズビル制定10周年でもあり、2015年頃からグループ全体を巻き込んだ周年記念プロジェクトが動き始めました。「2015年は準備期間として、110周年ロゴの制定や社外に配付するコンセプトブックを発行。また『お客さまともっと仲良くプロジェクト』『社員元気プロジェクト』の2本立てで、顧客・従業員を巻き込んで盛り上げていこうという取り組みを進めました。コンセプトは、『人を中心としたオートメーション』で未来を描く“FUNな社員がアズビルのFANを創る”ための具体企画案の作成。従業員一人ひとりがグループ理念に基づいて行動し、お客様に自分たちの提供価値を伝えていくことが、より愛されるアズビルとしてブランド認知やイメージの向上につながるだろうと考えたのです」。プロジェクトメンバーは若手を中心に組成され、会社や職種の垣根を超えて多様な人材が集まりました。「日ごろ、なかなか交流のない顔ぶれが集い、プロジェクトを進めていく中でおのずと絆が育まれ、学びを得ながら仲間となっていく。活気あふれるやり取りからそうした雰囲気を感じられました」と、高橋さんは振り返ります。その他、イントラにて記念サイトを開設し、110周年ロゴ誕生秘話をはじめ、周年記念の関連情報を広く発信するインフラも整えたそうです。

いよいよ訪れた2016年。それまでの助走からさらに記念事業は加速していきます。「4月には『創業110周年/azbil制定10周年展開プロジェクトチーム』を発足。節目の年を記念し、顧客・取引先、社員、地域・社会との結びつきを育むべく、さまざまな取り組みを実施しました。6月には藤沢にある事業所のショールームをazbil Techno Plazaとして新たに開設。ステークホルダーとの接点を広げる・深めるためのコンセプトブック4種も発行しました。お客様向けのセミナーやイベントの開催、2013年に開設した歴史展示場『山武記念館』の一部リニューアルなど、多方面で取り組みを展開しました」。

110周年のコンセプトブック4種

従業員向けのイベントとしては、ティーパーティと、そのアウトプットとしてのアイディアコンテストを開催。「“FUNな社員がアズビルのFANを創る”というコンセプトに加え、この記念の年を通じてアズビルの未来を考えたいという想いもあり、以前から行っていたティーパーティに着目しました。そこで、アズビルの日と制定している10月1日の前後で、職場の枠を超えて横断的なティーパーティを開催することに。同じ事業所内でも接点の少なそうな職場を組み合わせ、結果的には619組、延べ6200名が参加する大々的なイベントとして開催することができました」。アイディアコンテストでは、ティーパーティでのアイディア以外に有志による応募も受け付け、最終的にはファイナリスト6組によるプレゼンテーションを行い、グランプリを決定したそうです。「『azbilグループの未来につながるアイディア』として、総数620件も寄せられました。そうした取り組みを通しても、思いがけないコミュニケーションが生まれたようです」。

未来につながるきっかけに。周年事業への想いと考え方

創業100周年を起点に、10年越しで周年事業を展開されてきたアズビル。実施されるうえで、高橋さんは常に意識されていたことがあるそうです。「周年行事を、ブランド認知向上という経営目標達成に対し、いかに活用していくか。単なるお祭りで終わらせるのではなく、お客さまや社内でのコミュニケーション活性化を図ったり、従業員が主体となって未来を考えたりと、意義ある取り組みとして成果を残せるようにと考えて実行しました。こうした取り組みが基盤となって、新たな事業が生まれたり、従業員の絆が強まったりすることが非常に大事だと思っています。だからこそ、部門間や会社間の交流活性化策は、今後も継続していきたい。結びつきを育める場やチャンスを、これからも提供していきたいと考えています」と、高橋さんは語ります。
大々的なイベントの集大成としては、従業員向けの記念冊子を発行。日本語・英語・中国語で作成し、国内外のグループ従業員に配布されています。周年事業をきっかけに、会社としてさらなる飛躍へつながるチャンスとすること――。アズビルの果敢な挑戦は、これからも続いていきます。

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