社史・周年知恵袋
周年事業記念事業は“未来の問い”から始める──理念刷新と社史活用の戦略設計
周年は過去を振り返るだけでなく、未来への行動を見直す好機です。理念や社史を活用した設計が鍵となります。
創業◯周年。企業にとって節目の年は、過去を振り返り、功績を称える機会であると同時に、未来の在り方を見つめ直すタイミングでもあります。
しかし、現実には「記念式典を開催し、記念誌を発行する」だけで終わるケースが少なくありません。
そうした表層的な周年ではなく、事業や組織文化のアップデートにつなげる戦略的な周年設計こそ、今の時代に求められる姿勢です。
本稿では、「未来の問い」を起点に理念を刷新し、社史を“行動資源”として活用する周年設計のあり方をご紹介します。
周年は「完結」ではなく「再起動」のタイミング
周年といえば、まず「創業の年からの歴史をまとめる」「ロゴを刷新する」「記念イベントを開く」など、形に残る施策が想起されがちです。
しかし、真に意味ある周年とは、「次の10年、20年をどう生きるか」を全社で考える“再起動”のタイミングです。
その起点に必要なのは、「私たちは今、何を問うべきか」という未来への問いの設定です。
たとえば
- 私たちの存在価値は今後も変わらないか?
- 顧客に対して、何を提供していくべきか?
- 次の世代に、どのような文化を残すのか?
こうした問いを全社で共有することが、理念と社史の役割を深くします。
理念は「掲げるもの」から「問われるもの」へ
理念を更新しようとする際、経営層主導で文言だけを見直すのは得策ではありません。
大切なのは、「なぜこの理念が今必要なのか」という内発的な動機付けです。
未来の問いに向き合うプロセスの中で、
- 創業時に立ち返り
- 成長の中で変化した価値観を見つめ直し
- 現場や社員の声を交えて
新しい理念が“共創”されていくと、それは単なる言葉ではなく、行動の羅針盤として社員の中に根を張ります。
社史は“意味を持った行動”の蓄積である
周年で社史をつくると聞くと、「過去の出来事を年表に並べるもの」と思われがちですが、それでは読み手の心には届きません。
真に機能する社史とは、「このとき、なぜこの判断をしたのか」「どんな価値観に基づいて動いたのか」をストーリーとして構造化したものです。
それにより、現在の理念や判断軸が、過去の連続性の中で理解されるようになります。
たとえば
- 不況下でも価格を下げなかった
- 顧客の要望より長期的信頼を選んだ
- 現場の挑戦を経営が信じて支えた
こうした選択が記録されていれば、社員は「今の判断基準にはこうした背景がある」と“意味と行動”を結びつけて理解できます。
“問い”を見える化する周年プロジェクト設計の例
以下は、理念刷新と社史制作を同時に進めた企業のプロジェクト構成例です:
- 未来の問いを定義するワークショップ(経営・リーダー層)
- 社史の再構成(判断や挑戦の文脈を中心に)
- 理念草案の共創プロジェクト(社員横断型)
- イントラや社内報での公開レビューと投票
- “問い”を軸にした理念研修や浸透施策
形式にとらわれず、「何を見直すべきか、何を問い直すべきか」を中心に設計されているのが特徴です。
“成果”とは何か──周年が残すもの
周年事業を終えたあと、会社に残るべきものは記念品でも冊子でもなく、考え方と行動の変化です。
- 社員一人ひとりが「何のために働くのか」を言葉にできるようになる
- 経営の判断が理念に照らして語られるようになる
- 社史が現場で“未来の行動の根拠”として引用されるようになる
こうした変化があってこそ、周年は単なる節目ではなく、「組織文化を変えるきっかけ」になったといえるのです。
制作支援のご案内
日本ビジネスアート株式会社では、周年を契機とした理念刷新・社史再構築・社員巻き込み設計までを一貫してご支援しています。
- 理念共創ワークショップの設計と実施
- 判断軸を可視化する“語れる社史”の編集
- 多言語・Web対応コンテンツの構築
- 経営層と社員をつなぐ対話の場のデザイン
未来の答えを出す前に、問いを立てる。
周年はその問いを全社で共有し、理念と社史を通じて行動につなげる絶好の機会です。

