社史・周年知恵袋
社史 担当者創業の判断が示すもの──管理職に必要な“歴史観”の視座
創業時の判断には、今も企業文化の核となる価値観が表れています。管理職には、その背景を理解し判断に活かす“歴史観”が求められます。
企業の進化は、積み重ねられた「判断」の歴史でもあります。
とりわけ創業時に下された意思決定には、理念・哲学・リスクへの向き合い方といった、今なお企業文化の根幹を成す“原型”が凝縮されています。
管理職に求められるのは、現在の制度や目標を運用する能力だけではありません。
「自社がなぜこのような価値観に至ったのか」を理解し、判断の軸として持ち続ける“歴史観”の視座が、今後ますます重要になっていきます。
経営の軸をつくる“創業の判断”
創業期には、資金・人材・顧客など、あらゆるものが不足しています。
そのなかで何に優先順位を置き、何を守り、何を捨ててきたのか。そこには、「この企業が何を大事にする組織か」が率直に現れていると言えます。
たとえば──
- 利益よりも信頼を優先した取引の選択
- 完成度よりスピードを選んだ初期製品の判断
- 市場ニーズよりも理念を貫いた事業領域の設定
こうした選択は、「結果」以上に、企業がどんな価値判断を繰り返してきたかという“文脈”として、社史に刻まれています。
管理職が持つべき“歴史観”とは
近年の管理職には、現場マネジメントと同時に、理念浸透・人材育成・変革推進など多様な役割が求められます。
その中でブレない軸を持ち、組織を導くためには、「自社らしい判断とは何か」という時間軸を持った視点=歴史観が不可欠です。
歴史観を持つ管理職は、次のような問いを自分に投げかけることができます。
- これは自社の文化に沿った判断か?
- これまでどんな場面で似た判断がなされたか?
- 今回の決断は、10年後の社史にどう記録されるか?
このような問いを立てられることが、“守るべき文化”と“変えるべき慣習”を見極める力にもつながっていきます。
社史から学ぶ、判断の背景と構造
管理職研修やリーダー育成の場で、社史を教材として活用する企業が増えています。
その目的は、知識の共有ではなく、「なぜそう判断したのか」を理解する構造的な視点を持たせることにあります。
研修での活用例
- 創業時の複数エピソードを読み、そこに共通する価値観を抽出するワーク
- 社史から過去の危機対応を分析し、自部門に活かせる視点を議論
- 創業理念と現在の行動指針とのつながりをチームで整理しなおす演習
これにより、「理念は知っているが、自分の業務とは関係ない」という状態から脱却し、“判断に根拠を持てるリーダー”が育っていきます。
社史を“語り直す”ことで文化がつながる
冊子としてまとめられた社史はあっても、それが活用されていない企業は少なくありません。
しかし、創業の判断を「いまの現場の判断軸」としてつなげるには、社史を再編集し、語り直す設計が必要です。
- イントラでの定期連載「創業から学ぶ判断の技術」
- 管理職向け動画教材「創業の選択と今の現場」
- 社史に登場する創業期のエピソードを現役社員が再解釈するワークショップ
こうした取り組みによって、社史は過去の記録ではなく、いまの行動を支える“思考のベース”となっていきます。
創業者の思考は、今の判断に影響を与える
歴史は、過去のものではありません。
自社がどのように始まり、どのような選択をしてきたかを理解することは、これからの判断に一貫性と納得感をもたらします。
創業の判断には、合理性だけでは説明できない信念や価値観が込められていることが多くあります。
それこそが、社員を惹きつけ、文化をかたちづくる「軸」となってきたのです。
歴史観を育てる、社史活用の支援なら
日本ビジネスアート株式会社では、経営理念・判断軸・文化を“活かす形”で可視化する社史の制作や、研修活用前提のコンテンツ設計を行っています。
- 幹部・管理職向けの社史研修企画と運営
- 冊子+Web+動画など多形式での展開支援
- 歴史的事例を活かした社内教育プログラムの設計
“歴史観”があるリーダーは、判断に軸がある。
創業の選択から、今の文化がどう形づくられたか。
その本質を見つめ直すことが、次代の組織を導く管理職に欠かせない視座となります。