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事例

東洋メビウス株式会社 総務部 係長 小山 卓也様
写真で見せる記念誌

3社合併で目指した新しい物流会社の姿

東洋メビウス株式会社は東洋製罐グループの物流会社3社合併により、2008年10月に設立された会社です。

合併による規模拡大効果が働き、
●北海道から九州まで全国22カ所に事業拠点を配した全国輸送網
●自社保有車両を含め1700台のトラックと約400社に上る輸送協力会社による正確・迅速な貨物輸送
●物流業務の一括受託による顧客の物流の全体最適化・効率化・低コスト化を可能にする「トータル物流サービス」提供
――などの事業体制が整いました。

同社はこの強力な事業体制をプラットホームに、品質・輸送力・トータル物流サービスの三位一体化でオンリーワンの物流価値創出を目指すビジネスモデルを構築しました。

そして、
(1)全国規模の総合物流会社として、積極的に行動し、揺るぎない地位を目指します。
(2)「安全・確実・迅速」なトータル物流サービスを提供し、お客様のニーズに応え信頼関係を創造します。
(3)働く喜びを通じて、活気と潤いのある企業風土の醸成に努めます。
(4)地球環境に配慮するとともに、人類の生活文化の向上に貢献します。
――と4項目の経営方針を打ち立て、グローバル物流を視野に総合物流会社としての道を歩み始めました。

また、成長戦略的には、「品格の東洋メビウス」を経営ビジョンに掲げ、新会社設立から最初の10年間を第一期(創生期、黎明期)、2018年からの10間年を第二期(成長期)に位置付けたシナリオを描き、様々な施策により永続的で着実な成長を目指しました。

このビジネスモデル・経営ビジョン・成長戦略で同社が目指した会社像は、
●50年、100年のスパンで継続的に発展する会社
●社員同士並びに部門間の活発な社内コミュニケーションにより紡ぎ出される全社一体感と、そこから生まれる柔軟で強靭な組織への進化
●旧3社の異なった企業風土・文化の混合・昇華による「東洋メビウスらしい社風」創造とチャレンジングで即応性に富んだ現場力
――でした。

合併の強みを十分に活かせない!窮状を打開した意外なチャンスとは?

ところが、事業拠点が全国に散在しているため、同社は新会社発足直後から拠点間や部門間の連携が課題でした。連携不足解決が同社第一期の喫緊の経営課題になりました。

この経営課題解決においては、旧3社出身者同士の一体感醸成によるベクトルの一致が不可欠でした。また日々の業務を通じてでは、自社の経営ビジョンや成長戦略に対する社員個々の認識レベル差や温度差を埋めていくことがポイントでした。

そんな中で連携不足解決に向けた同社の試行錯誤が続いていました。この窮状を一気に打開するチャンスが巡ってきました。それがどの企業にも10年に一度訪れる周年でした。

「現場の生の姿にスポットライトを」の方針から導き出された周年事業の施策

経営課題が明確であり、その速やかな解決が役員全員の共通認識だったので、周年事業のコンセプトも役員全員の以心伝心の形で「つなぐ」とすんなり決まりました。問題は「どんな施策で、どのように」これを実施するかでした。

かくしてメンバー11名で構成する「東洋メビウス設立10周年記念事業実行委員会」が結成され、主要施策とその実施計画が検討されました。

経営会議の周年事業実施決定が2018年1月、そのゴールが2018年10月。準備期間はわずか10カ月しかありませんでした。まさに「初めにゴールありき」の形のスタートでした。「同業他社の周年事業成功例や自社と企業規模が同等の会社の周年事業成功例を参考に、様々な角度から成功確率の高い主要施策を検討して」の時間的余裕などありませんでした。

そこで実行委員会は主要施策の検討を後回しにし、事業コンセプトの「つなぐ」をどのようなストーリーで展開するのが一番わかりやすいかの検討を優先しました。

この検討においては、物流会社の事業特性は「人から人へ荷物を繋ぐと共に、その荷物に込められたお客様の思いを繋ぐところにある」との共通認識をヒントに、「この特性を全うできるのは?」との発想から、様々なシーンが追求され、論議されました。

この議論を整理した結果、「自社の拠点・部門間の繋がり、そこで活躍している社員同士の繋がり、そして過去と現在と未来との繋がり。これらの繋がりの中から生まれる『すべてはお客様のために』という全社員の使命感とモチベーション」のストーリーが生まれました。

次に、このストーリー展開の方法として「当社の現場の生の姿にスポットライトを当てる」方針が決定されました。

すると、この方針から、主要施策は10周年記念動画制作と10周年記念誌編纂の2件に絞り込まれました。10周年記念動画制作のための動画撮影では何度も雨に泣かされました。

動画のワンシーン
動画のワンシーン

メンバーは全員未経験者。汗と涙で乗り越えた共有体験が固い絆に

同社にとって動画制作は未経験。プロジェクトメンバーにも動画制作に詳しい社員はいませんでした。そのためか、当初は「全拠点に現場の生の姿をスマートフォン等で撮影してもらい、その画像データを編集して」と考えていたそうです。

しかし間もなく、そんな安易な方法では「つなぐ」を表現できる一体感や統一性のある動画制作はできないことが分かりました。そこで急遽映像制作会社の協力を得て、「つなぐ」を表現できるシナリオを作成し、さらに拠点ごとに「現場の生の姿にスポットライトを当てる」ための絵コンテを作成しました。その上でプロジェクトメンバーが手分けして各事業拠点と撮影日時を調整し、携帯ビデオカメラを片手に全国へ飛び散りました。

そんな準備不足もあり、撮影現場では様々なトラブルやアクシデントに見舞われましたが、かけがえのない収穫もありました。「プロジェクトメンバーは汗と涙で動画制作の困難を乗り越え、プロジェクトリーダーは綿密なスケジュール調整とアクシデント発生等によるスケジュール再調整に神経をすり減らしました。その共有体験が部門を越えた固い絆となり、今では各々の職場で『つなぐ』の率先垂範的な役割を果たしてくれています」(東洋メビウス設立10周年記念事業実行委員会を統轄した小山係長)といいます。

動画のワンシーン
現場での奇跡的ワンショット

「社員が主役」を活写した写真満載で「つなぐ」を端的に表現

一方、10周年記念誌は「現場、社員の素顔、社員の生の声を重点的に取り上げ、それをビジュアルに表現する」を編集方針に進めました。
企画に関しては、周年記念誌編纂支援の実績が豊富な日本ビジネスアートの提案を参考に検討した結果、次のような内容に決まりました。

(1) 特集1:東日本大震災
東日本大震災発災直後から4日間のBCP活動を振り返った座談会。誌面は当時の被災状況やBCP活動の写真を盛り込んでビジュアル豊かに構成。
(2) 年史
会社10年の歩みを「Gマーク取得」、「協輪会発足」、「東日本大震災対応」、「高槻物流センター開設」、「モーダルシフトへの取組みスタート」など、この10年間のメルクマール的出来事を11のエピソードで綴った「エピソード編」と「年表編」の2本立てで構成。
(3) 特集2:メビウス24h
各事業拠点の仕事内容と仕事のやりがいを紹介。さらにモデルになってくれた社員4名の、ある日の出勤から退勤までの業務風景を見開き2ページ・10コマの写真とキャプションで構成。
(4) メイン企画:つながる、ひろがる All Mebius
全事業拠点の業務内容と各職場の特徴・雰囲気をビジュアルに伝えるため、すべて執務風景写真と所属社員の集合写真で構成。

このような記念誌づくりをした結果、同社のあらゆるもののつながりが一目瞭然に分かると同時に、そのつながりを現場で支えている社員の姿をイキイキと写した写真で語らせる記念誌。すなわち、車のカタログのようなビジュアル重視の編集により、10周年事業のコンセプト「つなぐ」を端的に表現した、ユニークでメッセージ力のある周年記念誌が誕生したのです。

All Mebius
年表

周年事業だから広がった拠点の、部門の、社員の「つながり」

2018年10月、10周年記念事業推進に直接携わった実行委員会の社員の様々な思いを乗せ、10周年記念動画と10周年記念誌は全事業拠点の全職場へ配布されました。

それから1週間も経たないうちから実行委員会事務局へは全国の職場から「すごくよかった」、「こんな素晴らしいメディアを作ってくれてありがとう」などの声が続々と届きました。

特に全事業拠点・全職場の業務内容と各職場の特徴・雰囲気、そしてそこで活躍している社員の写真を網羅したメイン企画の「つながる、ひろがる All Mebius」は大好評でした。All Mebiusにより全社員が他部門の業務内容や職場の雰囲気を知ることができ、他部門の社員への親近感が強まったからでした。その後、All Mebiusが仲人役を務めるような形で、社内の様々な拠点・部門で社員同士の自発的なネットワークが生まれたといいます。

さらに、記念動画と記念誌を営業ツールとして顧客に披露し、自社の生の姿を知ってもらうことで顧客との信頼関係を深めた営業社員も少ないといいます。

正に周年事業だからこそ起こせた「東洋メビウスのニューウェーブ」といえるでしょう。

一般に「合併会社が名実ともに融合し、真の合併効果を発揮するには30年の歳月がかかる」といわれています。そんな中で同社の10周年記念事業は、事業目的の連携不足解決を大きく前進させたのみならず、合併会社固有の悩みといわれる「名実ともに融合」の時短にも効果があったようです。

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