社史・周年知恵袋

社史は、企業の節目に制作される“過去のまとめ”として位置づけられてきました。

しかしいま、求められているのは「読む」ための社史ではなく、「使われる」社史です。

理念の浸透、人材育成、採用広報、グローバル展開――あらゆる企業課題において、「企業らしさを言語化する基盤」として社史が再評価されています。

ただし、それを実現するには「編集の工夫」や「見た目の演出」だけでは足りません。必要なのは、“設計思想”の段階から、「どう未来で使われるか」を見据えた社史づくりです。

本稿では、未来に活用され続ける社史を実現するための3つの成功要因を紹介します。

1. 経営の問いを起点にする──「何のために作るか」を明確に

「創業〇周年だから」「記録が散逸しているから」多くの社史プロジェクトは、このような“発生的理由”でスタートします。

しかし、“記念”を起点にしてしまうと、完成後は“保管されるだけの資料”になってしまいがちです。

大切なのは、経営の課題や未来の意思と結びつけて、プロジェクトの起点を設計することです。

たとえば──

  • 理念が伝わらず、組織に軸がない → 創業の判断や転換点の語りから、価値観の源流を言語化
  • 若手が定着しない → 会社の“らしさ”や働く人の声を見える化し、誇りや共感の導線に
  • 海外展開で文化が分散している → 共通の物語としての社史を翻訳・多言語展開

こうした「なぜ、いま社史なのか?」という問いを明確にすることで、完成後の活用設計まで一貫した社史制作が可能になります。

2. “読者視点”で編集する──誰がどこで読むかを想定する

未来で使われる社史には、読み手の具体的な姿とシーンが設計時点から組み込まれています。

たとえば、

想定読者 活用シーン 編集の工夫
新入社員 入社前後の研修 創業ストーリーや理念の背景を物語形式で構成
管理職 判断軸の共有 転換点での意思決定や“失敗の意味”も丁寧に収録
海外現地社員 文化理解・一体感形成 多言語化・動画展開・インフォグラフィックによる可視化
採用候補者 志望動機形成 現場社員の声や「らしさ」が伝わるインタビュー記事
経営層 ビジョンの語源として 創業理念と現行戦略をつなぐ編集構成

読者ごとに“伝えるべき価値”と“必要な語り口”は異なります。誰のために・どこで・どう使われるかを想定した設計が、社史を「活きた資産」に変えていきます。

3. 再活用できる“導線設計”を仕込む──使われ続ける仕組みをつくる

社史は一度作って終わるものではありません。むしろ、その後何度・どこで・どう活用されるかで、その本当の価値が決まります。

そのためには、以下のような“活用導線”の設計が有効です。

イントラネット連載
「今日は何の日」「この価値観、どう行動されてきたか」などを定期発信
教育プログラムへの統合
理念研修や管理職研修の教材としてストーリーを組み込む
Webや動画との連動
紙だけでなく、多層的なメディア展開でタッチポイントを増やす
採用やIR資料と統合
組織の軸を伝える素材として、ストーリーや年表を再構成
周年のたびに更新できる構造
将来的な改訂や増補がしやすい構成にする

このように、「制作=始まり」と位置づけ、“どう使われ、どう育てられるか”という時間軸で設計された社史は、組織の文化資産として定着していきます。

制作支援のご案内

日本ビジネスアート株式会社では、記録のためではなく、活用され続ける“未来志向の社史”の制作・展開を支援しています。

  • 経営の課題と連動したコンセプト設計
  • 多拠点・多職種・多世代の語りを束ねる編集構成
  • 紙・Web・動画など複合メディアでの制作展開
  • 教育・採用・グローバル施策との接続設計

社史は、過去のアーカイブではありません。それは、企業の価値観を見直し、未来の行動を支える「組織の言語資産」です。

“読まれる”のではなく、“使われる”ために。周年や節目のタイミングを、記録の終着点ではなく、文化の出発点にする。

そんな視点で設計された社史は、企業を芯から強くする武器になります。

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