社史・周年知恵袋
社史 担当者海外拠点の文化融合を支える“共通の物語”としての社史活用法
異文化との融合が求められるグローバル展開において、組織の芯を共有する手段として注目されているのが“共通の物語”としての社史です。
グローバル展開が進む中で、企業にとって避けて通れないのが異文化との融合と共存です。
現地法人の立ち上げやM&A、拠点拡大にともない、異なるバックグラウンドを持つ人材が集まるようになると、単なる制度や規則だけでは組織を束ねきれなくなります。
そこで問われるのが、「どのように文化を共有するか」。その答えのひとつが、“共通の物語”としての社史の活用です。
「文化統一」ではなく「文化融合」を
文化の共有というと、日本型の価値観を押しつけるような“統一”が想起されがちですが、それでは現地メンバーの理解も共感も得られません。
求められるのは、異なる文化を尊重しつつ、自社の“芯”を共に育てていく「文化融合」のアプローチです。
では、共通点の少ないメンバーがどのように「同じチーム」として働けるようになるのか。
そのヒントは、企業の「物語」=社史にあります。
社史は“組織の共通語”になりうる
社史とは、創業の背景、事業の拡大、判断の積み重ね、失敗と再起…といった、企業の人格ともいえる記録です。
それは“ルール”や“理念”とは異なり、エピソードを通じて共有される「情緒を伴う価値観」です。
たとえば:
- 「創業者はなぜこの事業を選んだのか」
- 「危機のとき、何を守ろうとしたのか」
- 「最初の海外進出でどんな失敗と学びがあったのか」
こうした話を通じて、「この会社は、こういう考えで動いてきた」という“企業らしさ”が文化として伝わっていきます。
海外拠点での実用的な展開方法
社史を現地拠点で活用するには、以下の3つのポイントが鍵となります。
1. 現地言語・文化への適応
単なる翻訳ではなく、現地社員が自国の価値観と重ねて共感できるように言葉選びや構成、ストーリー性を調整します。
たとえば、義理や情のニュアンスは英語でそのまま伝わりにくいため、背景を補足することで理解が深まります。
2. 動画・証言を交えた感情伝達
創業者や経営陣のインタビュー、ベテラン社員の証言、過去の写真や資料映像などを活用することで、「文章では伝わりにくい温度」を共有できます。
とくにノンバーバルな要素(表情・声のトーンなど)は、異文化間での共感形成に有効です。
3. 双方向型の社史プラットフォーム
社史を単なる読み物ではなく、現地社員が自らの声を投稿できる“参加型アーカイブ”とすることで、自社の文化と現地の文化が交差する場が生まれます。
「私たちも、この会社の歴史をつくっている一員である」という意識を育むことができます。
社史が文化融合を支える理由
共通の物語には、多様な文化背景をもつ人々をつなぐ力があります。
異なる国籍・言語・信仰をもった人材でも、「この企業では、こういうときにこう判断してきた」という物語に触れれば、その行動原理や価値基準を自分のものとして取り入れるきっかけになります。
それは、「この会社が大切にしているものは何か」という根本理解につながり、行動・判断・コミュニケーションのズレを減らします。
海外展開における社史の活用支援
日本ビジネスアート株式会社では、グローバル展開企業向けに社史を再設計・多言語対応・動画制作・Web展開などを通じて、現地スタッフの文化理解・理念浸透を支援しています。
- 海外拠点向け社史の再編集と翻訳監修
- Web社史の構築とイントラ導線の整備
- グローバル人材向けのワークショップ設計
- ローカル証言を含む多拠点連携の証言アーカイブ化
「文化の違い」は壁ではない。それは融合による進化の機会です。
社史という共通の物語を起点に、国を越えてつながる組織づくりが、今求められています。