社史・周年知恵袋

経営者や経営陣が日々直面する意思決定の数々。市場環境が激しく変わるいま、その判断に一貫性を持たせることはますます困難になってきています。

新規事業と既存事業のバランス、短期収益と中長期投資の優先順位、多様化する人材やステークホルダーへの対応──。複雑化する経営環境のなかで、企業の「軸」をどこに置くかが、持続可能な組織づくりの分水嶺になっています。

こうした状況において注目されているのが、「社史を通じた原点の再確認」というアプローチです。

社史に刻まれた“判断の原型”を見直す

多くの企業にとって、社史は記録や回顧の手段と見なされがちです。しかし、真に活用すべきは「創業時や転換期に、どんな価値観をもって判断したのか」という“選択の履歴”です。

  • なぜこの事業領域に参入したのか
  • どんな顧客に価値を届けようとしたのか
  • 組織文化をどう形づくろうとしてきたのか
  • 危機や変化にどう対応し、何を守ったのか

そこには、数字や方針には現れない、その企業らしい意思決定の思想が詰まっています。

経営層こそ、この“判断の原型”をあらためて捉え直すことで、経営方針の根拠と方向性に一貫性を取り戻すことができます。

“企業の軸”が曖昧になる3つの要因

経営陣の間でも、組織としての軸がブレて感じられる背景には、次のような要因があります。

理念が形式化している
行動指針やバリューが掲げられていても、実際の判断や評価と紐づいていない。
代替わりやM&Aによる文化の断絶
経営体制や組織構造の変化によって、かつての判断基準が共有されなくなっている。
変化に対応するあまり“起点”を見失っている
新たな施策や制度導入が続くなかで、「なぜそれを選ぶのか」という原点が曖昧になる。

このような状況下で社史を読み直すことは、過去の繰り返しではなく、変化のなかで一貫性を取り戻す手段となります。

経営陣こそ“社史を語れる組織”へ

優れた企業は、トップが“自社の物語”を語れます。
それは創業ストーリーというよりも、「何を選び、何を捨ててきたか」「どのように今の文化が形づくられたか」という判断のコンテクストを語れる力です。

この力を育てるには、単なる知識として社史を読むのではなく、自らの言葉で語り直すことが求められます。

たとえば──

  • 創業時と現在を比較し、何が変わり、何が変わっていないかを整理する
  • 経営陣同士で「自社らしい判断とは何か」をディスカッションする
  • 若手や次世代リーダーに語るべき“企業らしさ”を自ら言語化してみる

こうした実践が、経営層にとっての「判断軸の再確認」となり、社内への文化発信の質を高めていきます。

社史を“経営の道具”にするには

社史を経営に活かすためには、次のような工夫が有効です。

  • 社史の再編集:理念や判断のエピソードに焦点をあてた構成に再設計する
  • 社内向けコンテンツ化:幹部層や管理職が活用しやすいよう、スライド・動画・イントラ記事などの形式に変換する
  • 経営層の語り場づくり:役員合宿や幹部研修で、歴史を軸に対話する場を設ける

これにより、社史は記念資料ではなく、“経営の再定義”のための資産になります。

組織が“軸”を取り戻した企業では

実際に社史を活用し、組織の軸を再構築した企業では、次のような変化が見られています。

  • 経営会議での方針議論に「原点としての理念」が持ち出されるようになった
  • 事業撤退や統廃合の場面で、「自社のらしさに立ち返った判断」ができるようになった
  • 社外パートナーからも「一貫性のある企業文化」として信頼を得ている

こうした変化は、“記録を読む”という行為が、“経営を整える”行為へと転化した結果だといえます。

経営に社史を活かす支援なら

日本ビジネスアート株式会社では、企業の歴史を「経営資産」として再編集し、経営層の対話・判断・共有のために活用できる社史制作を行っています。

  • 経営陣へのヒアリングを通じた価値観の可視化
  • 理念と歴史をつなぐ構成設計とコンテンツ制作
  • 幹部研修や組織文化変革プロジェクトへの連動

“どこに戻るか”が、組織の軸を決める。

今こそ、社史を通じて経営の起点を再確認し、未来に向けてぶれない軸を取り戻すときです。

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